広島地方裁判所 昭和62年(ワ)1435号 判決 1990年5月10日
原告(反訴被告)
シグナ・インシユアランス・カンパニー
ほか二名
被告(反訴原告)
塚本容行
主文
一 別紙交通事故目録記載の交通事故により被告(反訴原告)が受傷したことによる原告(反訴被告)らの被告(反訴原告)に対する保険金債務が、原告(反訴被告)シグナ・インシユアランス・カンパニーにつき金一六一万円を、原告(反訴被告)大東京火災海上保険株式会社につき金三八八万五〇〇〇円を、原告(反訴被告)日本火災海上保険株式会社につき金一二〇万をそれぞれ超えて存在しないことを確認する。
二 被告(反訴原告)に対し、原告(反訴被告)シグナ・インシユアランス・カンパニーは金一六一万円、原告(反訴被告)大東京火災海上保険株式会社は金三八八万五〇〇〇円、原告(反訴被告)日本火災海上保険株式会社は金一二〇万円及びこれらに対する昭和六二年一二月一八日から各支払ずみに至るまで年六分の割合による金員をそれぞれ支払え。
三 原告(反訴被告)らのその余の本訴請求及び被告(反訴原告)のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを二分し、その一を原告(反訴被告)らの負担とし、その余を被告(反訴原告)の負担とする。
五 この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
(本訴について)
一 請求の趣旨
1 別紙交通事故目録記載の交通事故により被告(反訴原告。以下、「被告」という)が受傷したことによる原告(反訴被告。以下、「原告」という)らそれぞれの被告に対する保険金債務がいずれも存在しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(反訴について)
一 請求に趣旨
1 被告に対し、原告シグナ・インシユアランス・カンパニー(以下、「原告シグナ」という)は三九四万二〇〇〇円、原告大東京火災海上保険株式会社(以下、「原告大東京火災」という)は六四五万五〇〇〇円、原告日本火災海上保険株式会社(以下、「原告日本火災」という)は二六九万円及びこれらに対する昭和六二年一二月一八日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
3 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 被告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第二当事者の主張
(本訴について)
一 請求原因
1 被告は、原告らそれぞれに対し、本訴請求の趣旨第一項記載の保険金債権を有すると主張している。
2 よつて、原告らは、被告に対し、右債権がいずれも存在しないことの確認を求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因1は認める。
三 抗弁
1 交通事故の発生
別紙交通事故目録記載のとおりの交通事故(以下、「本件事故」という)が発生した。
2 責任原因
原告らは、被告との間でそれぞれ別紙保険契約目録(以下、「契約目録」という)記載の保険契約を締結した。
3 傷害、治療経過及び後遺症
(一) 傷害
被告は、本件事故により、頸肩腕症候群、左手関節部挫傷の傷害(以下、「本件傷害」という)を受けた。
(二) 治療経過
塩田病院
通院 昭和六〇年三月一九日
入院 同月二〇日から同年四月八日(二〇日間)
通院 同月九日、一〇日
安古市病院
入院 昭和六〇年四月一〇日から同年九月一四日(一五八日間)
通院 同月一七日から同年一〇月二四日
4 保険金
(原告シグナ分)合計三九四万二〇〇〇円
(一) 契約目録記載(一)の保険金 一二五万二〇〇〇円
7,000×178+3,000×2=1,252,000
(二) 同(二)の保険金 二六九万円
15,000×178+10,000×2=2,690,000
(原告大東京火災分)合計六四五万五〇〇〇円
(三) 同(三)の保険金 一三四万五〇〇〇円
7,500×178+5,000×2=1,345,000
(四) 同(四)の保険金 二六九万円
15,000×178+10,000×2=2,690,000
(五) 同(五)の保険金 一〇〇万円
6,000×178+4,000×17=1,136,000
ただし、保険金限度額が一〇〇万円である。
(六) 同(六)の保険金 八九万五〇〇〇円
5,000×178+2,500×2=895,000
(七) 同(七)の保険金 五二万五〇〇〇円
75,000×7(月)=525,000
(原告日本火災分)二六九万円
(八) 同(八)の保険金 二六九万円
15,000×178+10,000×2=2,690,000
5 よつて、被告に対し、本件事故により被告が受傷したことによる保険金債務として、原告シグナは三九四万二〇〇〇円、原告大東京火災は六四五万五〇〇〇円、原告日本火災は二六九万円の各債務を負つている。
四 抗弁に対する認否及び原告らの反論
1 抗弁1は知らない。
2 同2は認める。
3(一) 同3は知らない。
(二) 本件事故態様・治療状況等からすれば、本件事故により被告が頸肩腕症候群等の傷害を負つたとは考えられず、本件事故と被告が頸肩腕症候群等の病名で入通院治療を受けたこととの間には、因果関係が認められない。
4 同4は争う。
五 再抗弁
1 被告と原告シグナ及び原告日本火災との間の普通傷害保険並びに被告と原告大東京火災との間のグリーンパツク保険の普通傷害保険部分(右グリーンパツク保険は、普通傷害保険と所得補償保険が合体したもので、普通傷害保険部分では他の原告二社の普通傷害保険の保険約款と同一の約款が規定されている)については、いずれも約款三条二項には、「原因の如何を問わず、頸部症候群(いわゆる「むちうち症」)又は腰痛で他覚症状のないものに対しては保険金を支払いません」と規定されているところ(なお、右普通傷害保険約款の三条二項の規定は、昭和五四年六月一日の改訂で追加されたものであり、現在に至るまで存在している)、被告の頸肩腕症候群には何ら他覚症状がない。
2 したがつて、本件事故により被告が頸肩腕症候群の傷害を受けたとしても、被告は、右各保険契約に基づき保険金の請求をすることができない。
六 再抗弁に対する認否及び被告の主張
1 原告らの再抗弁は、証拠調べが終了した後になされた新たな主張であり、時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
他覚症状の存否については争点でなかつたため、この点について十分な証拠調べがされなかつた経緯があるところ、原告らの右主張は、信義則に悖るものであり、権利の濫用として排除されるべきである。
2 再抗弁1のうち、原告シグナ及び原告大東京火災の普通傷害保険約款に原告ら主張にかかる規定が記載されていることは認めるが、原告日本火災の普通傷害保険については否認する。原告シグナ及び原告大東京火災の普通傷害保険についても、右規定の適用時期についての記載はなく、又売出し時期も不明であるから、本件への適用については疑問なしとしない。
又、被告の頸肩腕症候群につき他覚症状がないとの点は否認する。
(反訴について)
一 請求原因
1 本訴抗弁1に同じ。
2 同2に同じ。
3 同3に同じ。
4 同4に同じ。
5 よつて、被告は、本件事故により被告が受傷したことによる保険金として原告シグナに対し三九四万二〇〇〇円、原告大東京火災に対し六四五万五〇〇〇円、原告日本火災に対し二六九万円及びこれらに対する右保険金請求後の昭和六二年一二月一八日から各支払ずみに至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び原告らの反論
請求原因1ないし4に対する認否及び原告らの反論については、本訴抗弁に対する認否及び原告らの反論1ないし4に同じである。
三 抗弁
1 本訴再抗弁1に同じ。
2 同2に同じ。
四 抗弁に対する認否及び被告の主張
抗弁1、2に対する認否及び被告の主張については、本訴再抗弁に対する認否及び被告の主張1、2に同じである。
第三証拠
本件記録中の書証目録及び証人等目録に各記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 本訴請求原因事実は当事者間に争いがない。
二 事故の発生(本訴抗弁1及び反訴請求原因1)
1 被写体につき争いがない甲第一一号証の一ないし四、原本の存在及び成立に争いがない乙第一号証、被写体につき争いがなく、被告本人尋問の結果により本件事故後に撮影されたことが認められる乙第七号証、被告本人尋問の結果により本件事故後に被告車が衝突したガードレールを撮影したものであることが認められる乙第八号証、被告本人尋問の結果により成立が認められる乙第一一号証及び被告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。
(一) 別紙交通事故目録記載の日時・場所において、本件事故が発生した。
(二) 本件事故現場は、片側三車線のアスフアルト舗装された国道二号線上であり、被告は、被告車を運転して真ん中の車線を時速約五五キロメートルで進行中、先行車が停止したので、左側に車線変更したところ、右先行車が左車線を塞ぐ形でバツクしてきたため、急ブレーキをかけたが、折から雨が降つていたこともあつてスリツプし、道路左側のガードレールに被告車を衝突させた。
(三) 被告車の破損状況は、左フエンダーと左前ドアーの各前端が後方にめくれたようになつており、左フエンダーから左前ドアーにかけて擦過痕と凹損が見られ、左前ドアー部分はかなり凹損している。
又、衝突したガードレールの方もくの字型に変形している。
2 もつとも、前掲甲第一一号証の一ないし四、乙第八号証、成立に争いがない甲第一三号証及び弁論の全趣旨によれば、本件事故現場は喫茶店「野いちご」の位置よりやや東方になるものと推認され、又被告本人尋問の結果によれば、被告自身今では本件事故現場を明確には特定できないことが認められるが、一方、本件事故現場と右「野いちご」との距離は精々十数メートル離れているに過ぎないし、目立ちやすさから考えても、交通事故証明書(前掲乙第一号証)では事故発生場所が「野いちご」先と記載されていることと必ずしも矛盾するものではないうえ、被写体・撮影者・撮影年月日につき争いがない甲第一二号証の一ないし九及び被告本人尋問の結果によれば、本件事故現場付近はガードレールがなくなるなど道路状況が変化していることが明らかであるから、右事実をもつてしては、前記1の認定を左右するに足りない。
さらに、建設省中国地方建設局広島国道工事事務所に対する調査嘱託の結果(甲第一四号証の一は、右回答書)及び成立に争いがない甲第一四号証の二によれば、右工事事務所には、被告が本件事故によるガードレールの破損を申告し、右破損につき誓約書を提出したことを窺わせる記録は一切現存しないことが認められるところ、被告本人が自ら作成・提出したものであると供述している誓約書(前掲乙第一一号証)には、同工事事務所広島維持出張所の記名印があること、成立に争いがない乙第一三号証の一、二によれば、本来誓約書は二枚綴りとなつており、建設省と提出者本人が各一枚を保管することになつているが、建設省側の右保管状況は必ずしも厳重でないことが窺われることなどに照らし、右工事事務所において被告にかかる誓約書を紛失した可能性も否定できず、右のとおり工事事務所に関係記録が現存しないことから被告本人の供述が虚偽のものであり、ひいては、乙第八号証の写真自体が本件事故現場のものではないものと速断することもできないものというべきである。
三 責任原因(本訴抗弁2及び反訴請求原因2)
責任原因事実は当事者間に争いがない。
四 原告受傷の部位・程度及び本件事故との因果関係(本訴抗弁3及び反訴請求原因3)
1 成立に争いのない甲第六号証の一ないし三、第七号証、原本の存在及び成立に争いがない甲第一〇号証の一ないし三、乙第二ないし四号証、被写体につき争いのない乙第一〇号証、山口整形外科病院に対する調査嘱託の結果並びに被告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。
(一) 被告は、本件事故当日の昭和六〇年三月一九日、塩田病院で受診し、即日頸部及び左手関節のレントゲン検査が行われ(被告の傷病名として、塩田病院の診療録には頸肩腕症候群、慢性肝炎と、昭和六〇年四月二四日付診断書には頸肩腕症候群、左手関節部挫傷と各記載されている。)、翌二〇日から同年四月八日まで入院治療を受け(二〇日間)、更に同月九日、一〇日と通院した。
その後、被告は、安古市病院で受診し(被告の傷病名として、診療録には頸椎むちうち損傷と、昭和六〇年一〇月一五日付診断書には頸肩腕症候群、左手関節部挫傷と各記載されている)、同年四月一〇日から同年九月一四日まで入院治療し受け(一五八日間)、同月一七日から同年一〇月二四日まで通院した(通院実日数二〇日間)。なお、被告は、安古市病院に入院中の同年七月二〇日、山口整形外科病院において頸部のレントゲン検査を受けている。
更に、被告は、同年五月一日から同年一一月二〇日までの間、耳鳴り及び難聴を訴えて、田代耳鼻咽喉科医院に通院して治療を受けた(通院実日数八一日)。
(二) 被告は、塩田病院で入通院中、頭痛、吐き気、項部(もしくは後頸部)痛、左手関節痛等を訴え、担当医から安静にするように命じられ、投薬による薬物療法、頸部・左手の湿布療法が行われた。安古市病院に入通院中は、項部(もしくは後頸部)痛、左手関節痛、両上肢の痺れ、耳鳴り等を訴え、牽引・電気等の理学療法、星状神経節ブロツク(頸部交感神経のひとつである星状神経節に対する局所麻酔注射)等が行われた。
(三) 山口整形外科病院におけるレントゲン検査(頸部、乙第一〇号証)によれば、頸椎に経年性変化があり、被告の第四、五頸椎には骨棘形成が、第五と第六頸椎の間では椎間板の狭小化がそれぞれ見られる(右は、いわゆる経年性の変形性脊椎症であると推認される)。又、同病院の山口敏美医師は、被告の頸椎に運動性制限が見られる旨指摘している。
2 以上1の事実に、前記二に認定の事故状況を併せ考えると、本件事故と被告の本件傷害(頸肩腕症候群、左手関節部挫傷)との間には相当因果関係を認めるのが相当である。
もっとも、甲第九号証(技術士林洋作成の鑑定書)には、被告車の損傷部位の写真から、被告車に生じた加速度は〇、二四G程度であると推定し、本件事故によつて頸椎捻挫等の傷病が発生することは考えられない旨記載されているところ、右加速度の数値を算出するについて、被告車の左フエンダー前端に加わつた衝撃力が一〇ポンド(四・五四キログラム)のハンマーを一メートルの高さから自然落下させた時の五倍の速さで振つて打撃した時の衝撃力と同じであることをその前提としているが、被告車の左フエンダー前端に加わつた衝撃力を右のとおり推認した根拠について何ら具体的な説明はなされておらず、右加速度の数値は推測の域をでないものというほかなく、鑑定書の右記載部分を到底採用することはできない。
又、塩田病院の診療録(前掲乙第六号証の一)によれば、被告は、本件事故前の昭和六〇年三月九日から左手掌挫傷の傷病名で塩田病院に通院していたことが認められ、左手関節部挫傷の傷病名は本件事故とは無関係であるとする余地がないではないが、前記認定のとおり、被告は事故当日の同月一九日に同病院で左手関節部のレントゲン検査を受けているのであるから、被告が本件事故直後新たに左手関節部の痛みを訴えたものと推認されるところであり、右事実をもつてしては、前認定を左右するに足りない。
3 経験則上いわゆるむちうち症による治療期間は一般に二ないし三か月程度であることが認められるところ、被告の経年性の変形性脊椎症(本件事故前に被告が右傷病名で治療を受けていたことを認めるに足りる証拠はないから、本件事故当時は無症状のものであつたと認められる)が競合して治療が通常より長期間に及んでいることが推認される(なお、慢性肝炎の既往症については、これが原因で本件治療が長期化したものと認めるに足りない)。
ところで、成立に争いがない甲第一ないし第五号証及び第一五、一六号証によれば、本件各保険約款には、被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によつて傷害を被つたときすでに存在していた身体傷害もしくは疾病の影響により、又は右傷害を被つた後にその原因となつた事故と関係なく発生した傷害もしくは疾病の影響により右傷害が重大となつたときは、保険会社はその影響がなかつた場合に相当する金額を決定して被保険者に支払う旨の規定のあることが認められるから、本件のように保険事故と被告の体質的素因(経年性の変形性脊椎症)との競合により治療が通常より長期間に及んでいる場合にも、右規定に準じ、体質的素因による寄与度に応じて保険によつて担保すべき適正な傷害の程度を限定し、右に従つて保険金額を割合的に減額する余地がないではない。
しかしながら、定額保険金は具体的損害額と関係なく一律に支給されるのが原則であること、不法行為による損害賠償事案との均衡等を考えると、右素因による減額を考慮するのは、素因の占める要素が極めて高い場合、すなわち、保険事故がなくてもいずれ被保険者の体質的素因を主因として損害が発生した蓋然性が高い場合等保険金全額を保険会社に支給させることが公平の観念に照らし著しく不当と認められるような場合に限られるものと解するのが相当である(右減額事情の立証責任は保険会社が負担するものというべきである。)
これを本件についてみるに、前記認定の事実のみをもつてしては、いまだ右減額を考慮すべき場合に該当するものと認めるに十分でないし、他に右事情を認めるに足りる証拠もないから、被告の右体質的素因による寄与度に応じて保険金額を割合的に減額するのは相当でないものというべきである。
4 もつとも、前掲甲第一〇号証の一及び成立に争いがない甲第八号証によれは、被告は、塩田病院を退院後安古市病院に入院中(昭和六〇年四月一〇日から同年九月一四日までの一五八日間)、約半分に当たる七五日間も外泊していることが認められるから、塩田病院を退院した時点でむちうち症のいわゆる急性期(経験則上、一般的に二ないし三週間であり、その間の治療としては、安静と湿布・薬物療法等が必要とされているところ、現に塩田病院での治療も同様であつたことは、前記認定のとおりである)は一応経過していたものと推認されることも考えると、安古市病院における治療については、治療の必要性自体を否定することはできないものの、入院治療の必要性があつたものと認めることには疑問があるものといわざるをえない。
したがつて、安古市病院における入院治療については、これを通院治療の限度で本件事故と相当因果関係のある治療であると解するのが相当である。
五 保険金(本訴抗弁4及び反訴請求原因4)
(原告シグナ分)合計一六一万円
1 契約目録(一)の保険金 四一万円
前掲甲第一号証によれば、入院治療は一八〇日が、通院治療は九〇日が限度となる。
7,000×20+3,000×90=410,000
2 同(二)の保険金 一二〇万円
前掲甲第二号証によれば、入院治療は一八〇日が、通院治療は九〇日が限度となる。
15,000×20+10,000×90=1,200,000
(原告大東京火災分)合計三八八万五〇〇〇円
3 同(三)の保険金 六〇万円
前掲甲第三号証によれば、入院治療は一八〇日が、通院治療は九〇日が限度となる。
7,500×20+5,000×90=600,000
4 同(四)の保険金 一九〇万円
前掲甲第四号証によれば、入通院治療を通じて事故日から一八〇日が限度となる。
15,000×20+10,000×160=1,900,000
5 同(五)の保険金 七六万円
前掲甲第四号証によれば、入通院治療を通じて一〇〇万円が限度となる。
6,000×20+4,000×160=760,000
6 同(六)の保険金 三二万五〇〇〇円
前掲甲第五号証によれば、入院治療は一八〇日が、通院治療は九〇日が限度となる。
5,000×20+2,500×90=325,000
7 同(七)の保険金 三〇万円
前掲甲第五号証によれば、就業不能期間に対して支払われるところ、本件の場合は四か月と認めるのが相当である。
75,000×4(月)=300,000
(原告日本火災分)一二〇万円
8 同(八)の保険金 一二〇万円
前掲甲第一五号証によれば、入院治療につき一八〇日が、通院治療につき九〇日が限度となる。
15,000×20+10,000×90=1,200,000
六 免責約款(本訴再抗弁及び反訴抗弁)
1 原告らの右免責約款に基づく主張は、ほぼ証拠調べが終了した段階でなされた新たな主張ではあるが、右主張に関連する書証等は初期の審理段階で提出されており、いずれ原告らによつて主張されることも予め予測されたものというべきであるから、時機に遅れた攻撃防御方法であると一概にいうことはできないし、右主張をもつて権利の濫用に当たるものと解することもできない。
2 被告の頸椎に運動性制限が見られること前記四1に認定のとおりであるし、本件事故による原告の受傷が原告の体質的素因である変形性脊椎症(無症状)を発症させた面を否定できないのであつて、他覚症状のないものということはできないから、原告らの右主張は採用できない。
七 結論
してみると、被告に対し、本件事故により被告が受傷したことによる原告らの保険金債務として、原告シグナは一六一万円、原告大東京火災は三八八万五〇〇〇円、原告日本火災は一二〇万円及びこれらに対する右保険金請求を受けた後である昭和六二年一二月一八日から各支払ずみに至まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払う義務が認められるところ、原告らの本訴請求(債務不存在確認請求)は、右認定の債務額を超える部分については理由があるので認容し、その余の部分については理由がないのでこれを棄却し、又、被告の反訴請求(保険金請求)は、右認定の限度で理由があるので認容し、その余の部分については理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 内藤紘二)
交通事故目録
一 日時 昭和六〇年三月一九日午前二時三〇分頃
二 場所 広島市南区東雲三丁目六番「野いちご」先路上
三 運転車両 軽四乗用自動車(広島五〇え三五〇八。以下「被告車」という)
右運転者 被告
四 態様 被告が被告車を運転して進行中、運転を誤つて左側ガードレールに衝突した。
以上
保険契約目録
契約内容・証券番号 保険期間 給付金の内容(日額)
(原告シグナ・インシユアランス・カンパニー)
(一) 普通傷害保険証券番号(六八〇KPB〇七三五五六) 昭和五九年五月二八日から一年間 入院 七〇〇〇円 通院 三〇〇〇円
(二) 住宅総合保険付帯交通傷害保険証券番号(九一〇FC九〇九六九七) 昭和五九年五月二八日から一年間 入院 一万五〇〇〇円 通院 一万円
(原告大東京火災海上保険株式会社)
(三) 積立フアミリー交通傷害保険証券番号(一二五〇―〇九〇三二) 昭和五八年一一月一日から五年間 入院 七五〇〇円 通院 五〇〇〇円
(四) 自家用自動車総合保険証券番号(一六五〇―一五二一八)の搭乗者傷害条項 昭和五九年一二月三一日から一年間 入院 一万五〇〇〇円 通院 一万円
(五) 同保険・同証券番号の自損事故特約条項 昭和五九年一二月三一日から一年間 入院 六〇〇〇円 通院 四〇〇〇円
(六) グリーンパツク保険証券番号(一二五〇―一一八〇三)の普通傷害保険部分 昭和五九年一一月一八日から一年間 入院 五〇〇〇円 通院 二五〇〇円
(七) 同保険・同証券番号の所得補償保険部分 昭和五九年一一月一八日から一年間 所得補償(月額) 七万五〇〇〇円
(原告日本火災海上保険株式会社)
(八) 普通傷害保険証券番号(一五七六六四〇〇四) 昭和六〇年一月二一日から一年間 入院 一万五〇〇〇円 通院 一万円
以上